女大学

わたしたちが今日ふつう「女大学」と呼んでいるのは、この書の本文を受けついで編まれた教順書類である。

概要

女大学とは?

具体的に、、大阪の柏(カシ)原(ワラ)清(キヨ)右(ウ)衛(エ)門(モン)柏原清右衛門(カシワラキヨウエモン)柏原清右衛門と江戸の小(オ)川(ガワ)彦(ヒコ)九(ク)郎(ロウ)小川彦九郎(オガワヒコクロウ)小川彦九郎とが合梓した教順書の題名に当たります。

最古の版本は、“女(オンナ)大(ダイ)学(ガク)宝(タカラ)箱(バコ)女大学宝箱(オンナダイガクタカラバコ)女大学宝箱”と言われています。

江戸中期から明治期いたるまで幅広く支持された女子教訓書。

しかし、「女大学」という一般的に言われている内容になると、女として夫と家を支え、慎みを忘れずに女の道を極めよという倫理観のもと、親および舅(しゆうと)舅(しゆうと)舅・姑(しゆうとめ)姑(しゆうとめ)姑に対する孝、洗濯、裁縫等の家事労働、結納・結婚・出産・子育て、三味線などのお稽古、身だしなみのことなど多岐に渡ることをさすことになります。

著者と歴史

貝(カイ)原(バラ)益(エキ)軒(ケン)貝原益軒(カイバラエキケン)貝原益軒 (nouvelle fenêtre)の「和(わ)俗(ぞく)童(どう)子(じ)訓(くん)和俗童子訓(わぞくどうじくん)和俗童子訓 (nouvelle fenêtre) 」のなかの第五巻「教女子法」に依拠するが、著者を益軒 (nouvelle fenêtre)とする確証はありません。

“女大学宝箱”だけでも明治初年までに11版を重ねましたが、18世紀後半以降になると、挿絵や頭書きを改めて「女大学」を冠した多様な改定本、“女大学教(おしえ)文(ぶん)庫(こ)教文庫(おしえぶんこ)教文庫”、“女大学操(みさお)鑑(かがみ)操鑑(みさおかがみ)操鑑”といった類が数多く刊行されました。

貝原益軒 (nouvelle fenêtre)著「女子を教(おし)教(おし)教ゆる法」、そのなかでも第十条(七(しち)去(きょ)七去(しちきょ)七去の法 (nouvelle fenêtre))・第十六条(嫁する娘に親が説き聞かすべき十三ヵ条)を下敷きにして、婦徳を中心に十九ヵ条の教訓文にしたてている点に特徴がみられる。

結果として、「女(にょ)子(し)女子(にょし)女子を教(おし)教(おし)教ゆる法」、に採られていた男女の価値平等観は捨象され、斉家と婦人自身の保全を目的とし、女性の心得を家庭生活内に限定して説き、具体的な作法や躾、技能や教養におよばず、もっぱら心がまえを力説したものとなっている。

女の道とは?

「 女(おんな)女(おんな)女の道(みち)道(みち)道 」、「夫に仕ふる道」のこと。婦(ふ)人(じん)婦人(ふじん)婦人の道ともいう。いわゆる、夫に従う道であり、

「一度嫁いりしては、其の家を出でざるを女の道とすること、古(いにしえ)古(いにしえ)古聖人の訓(おし)訓(おし)訓えなり、若(も)若(も)若し女の道にそむき、去らるる時は、一生の恥なり」 (“女大学宝箱(オンナダイガクタカラバコ)女大学宝箱(オンナダイガクタカラバコ)女大学宝箱”)、 「都(すべ)都(すべ)都て婦人の道は和(やわ)和(やわ)和らぎ従うにあり、夫に対するに顔色、言葉づかい、慇(いん)懃(ぎん)慇懃(いんぎん)慇懃に謙(へりくだ)謙(へりくだ)謙り遜譲(ゆずる)遜譲(ゆずる)遜譲べし、不忍(しのばず)不忍(しのばず)不忍して不順なるべからず、奢(おご)奢(おご)奢り驕(たかぶ)驕(たかぶ)驕りて無礼なるべからず、是れ女子の第一なる努めなり」(“新(シン)撰(セン)増(ゾウ)補(ホ)女子(オンナ)大(ダイ)学(ガク)新撰増補女子大学(シンセンゾウホオンナダイガク)新撰増補女子大学 (nouvelle fenêtre)”)と記されているように、女=婦人は、結婚した女性をさしている。

それ故に、「貞(てい)操(そう)貞操(ていそう)貞操は女の道の第一なり」

として、 「貞操」を守ることが第一とされた。

江戸時代を通じて膳行者を表彰した孝(こう)義(ぎ)伝(でん)孝義伝(こうぎでん)孝義伝が各地でつくられているが、そこに収められている女性の表彰事由についてみると、「女の道」を守ったことによって表彰されている事例が少なくない。

「貞操」をはじめとする右に引用したような内容を含んだ「女の道」を守ることが模範的女性であるとされたのであった。

だから、貞(てい)操(そう)・貞節(ていせつ)貞操・貞節(ていそうていせつ)貞操・貞節でない女性は「夫に仕える道」すなわち「女の道」を踏み外したものであり、「不(ふ)貞(てい)者(しゃ)不貞者(ふていしゃ)不貞者」として批判された。

いずれにしても家制度保持のためのものであり、「女の道」は一方的に女性に課せられたくびきであった。

一夫一妻の枠組みのなかで、「貞操」を守らなくてはならないのは女のみであり、男には適応されなかったのが江戸時代であった。

したがって「女の道」から外れた「不貞」は女にだけ適応する言葉である。

女大学宝箱

女大学とは? ↑

内容目次

女児はひとえに親のおしえひとつで育つものである。⭣

女は容(かたち)容(かたち)容より心の勝っているのがよろしい。⭣

男女の別を正しくして、女子は独自の徳を身につけなければいけない。⭣

女性にとって本来の家は婚家。

七去の法。⭣

生家の親より、しゅうと・しゅうとめに孝養をつくすべきである。⭣

婦人は夫を主君としてつかえねばならない。⭣

兄公(こじゆうと)兄公(こじゆうと)兄公・女公(こじゆうとめ)女公(こじゆうとめ)女公を敬いむつかじくすべきである。⭣

嫉妬の心をおこしてはならない。

夫にたいするいさめかた。⭣

言語(ことば)言語(ことば)言語のつつしみ。⭣

日常の生活での行為のしかた。⭣

巫(みこ)巫(みこ)巫・ 覡(かんなぎ)覡(かんなぎ)覡に迷ってはならない。⭣

妻はその家の分限に従って経営しなければならない。⭣

女は、若いとき、男性に近づいてはならない。⭣

衣裳を清潔に保つべし。⭣

夫の方の親類を大切にあつかえ。⭣

しゅうと・しゅうとめに、生家の親よりもあつくつかえよ。⭣

妻が家の中で務むべき仕事。⭣

下女のあつかいかた。⭣

女の心ざま悪しき五種の病気。 従順の徳をかたく身につけよ。⭣


女大学宝箱

本文

1 夫れ、女(にょ)子(し)女子(にょし)女子は成長して他人の家へ行き、舅(しゆうと)舅(しゆうと)舅・姑(しゆうとめ)姑(しゆうとめ)姑、に仕(つか)仕(つか)仕ゆるものなれば、男(なん)子(し)男子(なんし)男子よりも、親の教えゆるがせにすべがらず。

父母寵(ちょう)愛(あい)寵愛(ちょうあい)寵愛して恣(ほしいまま)恣(ほしいまま)恣に育てぬれば、夫の家に行きて、必ず気(き)随(ずい)気随(きずい)気随(わがまま)にて疎(うと)疎(うと)疎まれ、又は舅の誨(おし)誨(おし)誨え正しければ堪え難(がた)難(がた)難く思い、舅を恨み誹(そし)誹(そし)誹り、中(なか)中(なか)中悪しくなりて終(つい)終(つい)終には追い出だされ、恥を曝(さら)曝(さら)曝す。

女子の父母、我が順(おし)順(おし)順えなき事を謂わずして、舅・夫の悪しきと而己(のみ)而己(のみ)而己思うは誤りなり。

是れ皆、女子の親のおしえなき故なり。 ↑

2 女は容(かたち)容(かたち)容よりも心の滕(まさ)滕(まさ)滕れるを善(よ)善(よ)善しとすべし。

心(こころ)心(こころ)心緒(ばえ)緒(ばえ)緒無(よし)無(よし)無美(なき)美(なき)美女は、心騒がしく、眼(まなこ)眼(まなこ)眼恐ろしく見だして人を怒り、言葉訇(あら)訇(あら)訇らかに物をいい、さがなく口諬(き)諬(き)諬きて(下品な口をきいて)人に先立ち、人を恨み嫉(ねた)嫉(ねた)嫉み、我が身に誇り、人を謗(そし)謗(そし)謗り笑い、われ人に滕り皃(かお)皃(かお)皃なるはみな女の道に違えるなり。

女は唯(ただ)唯(ただ)唯、和(やわ)和(やわ)和らぎ順(したが)順(したが)順いて貞信に(心正しく操を守って)、情(なさけ)情(なさけ)情深く静かなるを淑(よし)淑(よし)淑とす。 ↑

3 女(にょ)子(し)女子(にょし)女子は、稚(いとけな)稚(いとけな)稚き時より、男(おとこ)女(おんな)男女(おとこおんな)男女の別(わか)別(わか)別ちを正しくして、仮(かり)初(そめ)仮初(かりそめ)仮初にも戯(たわぶ)戯(たわぶ)戯れたることをを見聞かしむべからず。

古(いにしえ)古(いにしえ)古の『礼』に、

「男(なん)女(にょ)男女(なんにょ)男女は席(しきもの)席(しきもの)席を同じくせず。衣裳をも同じ処に置かず。おなじ所にて浴(ゆあみ)浴(ゆあみ)浴せず。物を請(う)請(う)請け取りわたすことも、手より手へ直(じき)直(じき)直せず。夜行くときは、必ず燭(ともしび)燭(ともしび)燭を燈(とも)燈(とも)燈してゆくべし。他人はいうに及ばず、夫婦・兄弟にても、別を正しくすべし」

となり。

今(いま)時(どき)今時(いまどき)今時の民家は、此(か)様(よう)此様(かよう)此様の法を知らずして、行(ぎょう)規(ぎ)行規(ぎょうぎ)行規を乱りにして名を穢(よご)穢(よご)穢し、親兄弟に辱(はじ)辱(はじ)辱をあたえ、一生身を空(いたずら)空(いたずら)空にする者あり。口惜しき事にあらずや。

「女は、父母の命(おおせと)命(おおせと)命媒妁(なかだち)媒妁(なかだち)媒妁とに非ざれば、交わらず親しまず」

と、『小学』にも見えたり。

仮令(たとい)仮令(たとい)仮令命を失うとも、心を金石のごとくに堅くして、義を守るべし。 ↑

4 婦人は夫の家をわが家とする故に、唐土(もろこし)唐土(もろこし)唐土には、嫁いりを「帰る」という。我が家にかえるという事なり。

縦(たとい)縦(たとい)縦夫の家貧賤なりとも、夫を怨(うら)怨(うら)怨むべからず。

天よりわれにあたえ給える家の貧しきは、我が仕合せの凶(あ)凶(あ)凶しき故なりともおもい、一(ひと)度(たび)一度(ひとたび)一度嫁いりしては其の家を出ざるを女の道とすること、古(いにしえ)古(いにしえ)古、聖人の訓(おし)訓(おし)訓えまり。

若(も)若(も)若し女の道にそむき、去らるる時は、一生の恥なり。されば婦人に七去(しっきょ)七去(しっきょ)七去として、悪しきこと七つあり。

 一には、嫜(しゆうとしゆうとめ)嫜(しゆうとしゆうとめ)嫜に順(したが)順(したが)順わざる女は去るべし。

 二には、孑なき女は去るべし。

 是れ妻を娶(めと)娶(めと)娶るは子孫相続の為なれば也。然(しか)然(しか)然れ共、婦人の心正しく行儀よくして妬(ねた)妬(ねた)妬むこころなくば、さらずとも同(おなじ)姓(うじ)同姓(おなじうじ)同姓の子を養うべし。或は妾(てかけ)妾(てかけ)妾に子あらば、妻に子なく共、去るに及ばず。

 三には、淫(いん)乱(らん)淫乱(いんらん)淫乱なればさる。

 四には、悋(りん)気(き)悋気(りんき)悋気ふがければさる。

 五に、癩(らい)病(びょう)癩病(らいびょう)癩病などの悪しき疾(やまい)疾(やまい)疾有ればさる。

 六に、多言(くちまめ)多言(くちまめ)多言にて慎みなく、物いい過ごすは、親類とも中(なか)中(なか)中悪しくなり、家みだるるものなれば去るべし。

 七には、物を盗む心あるはさる。

此の七去は皆聖人の教えなり。

女は一度嫁いりして其の家を出だされては、仮令(たとい)仮令(たとい)仮令ふたたび富(ふう)貴(き)富貴(ふうき)富貴なる夫に嫁すとも、女の道にたがいて、大いなる辱(はじ)辱(はじ)辱なり。 ↑

5 女(にょ)子(し)女子(にょし)女子は、我が家にありては、わが父母に専ら孝を行なう理(ことわり)理(ことわり)理なり。

されども、夫の家に行きては、専ら嫜(しゆうとしゆうとめ)嫜(しゆうとしゆうとめ)嫜をわが親よりも重んじて厚く愛(いつく)愛(いつく)愛敬い、孝行を尽くすべし。

親の方(かた)方(かた)方を重んじ、舅(しゆうと)舅(しゆうと)舅の方を軽んずることなかれ。

嫜(しゆうとしゆうとめ)嫜(しゆうとしゆうとめ)嫜の方の朝夕の見まいを闕(か)闕(か)闕べからず。

嫜(しゆうとしゆうとめ)嫜(しゆうとしゆうとめ)嫜の方の勤むべき業(わざ)業(わざ)業を怠るべからず。

若し嫜(しゆうとしゆうとめ)嫜(しゆうとしゆうとめ)嫜の命(おおせ)命(おおせ)命あらば、慎み行ないて背(そむ)背(そむ)背くべからず。

万(よるず)万(よるず)万のこと、舅(しゆうと)舅(しゆうと)舅・姑(しゆうとめ)姑(しゆうとめ)姑に問うて、其の教えに任(まか)任(まか)任すべし。

舅(しゆうと)舅(しゆうと)舅・姑(しゆうとめ)姑(しゆうとめ)姑もし我を憎み誹(そし)誹(そし)誹り給うとも、怒り恨むることなかれ。

孝を尽くして誠をもってつかゆれば、後(のち)後(のち)後はかならず中(なか)好(よ)中好(なかよ)中好くなるもの也。 ↑

6 婦人は別に主君なし。 夫を主人と思い、敬い慎みて事(つか)事(つか)事うべし。軽(かろ)軽(かろ)軽しめ侮(あなど)侮(あなど)侮るべからず。総じて婦人の道は、人に従うにあり。

夫に対するに、顔色言葉づかい慇(いん)懃(ぎん)慇懃(いんぎん)慇懃に謙(へりくだ)謙(へりくだ)謙り、和順なるべし。不忍(いぶり)不忍(いぶり)不忍(不平をいうこと)にして不順なるべからず。奢りて無礼なるべからず。

これ女(にょ)子(し)女子(にょし)女子第一勤めなり。

夫の教訓あらば、其の仰せを叛(そむ)叛(そむ)叛くべからず。

疑わしきことは夫に問うて、その下(げ)知(ち)下知(げち)下知に随うべし。

夫問うこと有らば、正しく答うべし。

其の返答疎(おろそ)疎(おろそ)疎かなるは、無礼なり。

夫若し腹立て怒るときは、恐れて順(したが)順(したが)順うべし。

怒り諍(あらそ)諍(あらそ)諍いてその心に逆(さか)逆(さか)逆うべからず。

女は夫をもって天とす。返すも夫に逆らいて天の罰を受けべからず。 ↑

7 兄公(こじゆうと)兄公(こじゆうと)兄公・女公(こじゆうとめ)女公(こじゆうとめ)女公は、夫の兄弟なれば、敬うべし。

夫の親類に謗られ憎まるれば、舅(しゆうと)舅(しゆうと)舅・姑(しゆうとめ)姑(しゆうとめ)姑の心に戻(そむ)戻(そむ)戻きて、我が身の為にも宜しからず。

睦まじくすれば、嫜(しゆうとしゆうとめ)嫜(しゆうとしゆうとめ)嫜の心にも協(かな)協(かな)協う。又娌(あによめ)娌(あによめ)娌を親しみ穆(むつ)穆(むつ)穆ま敷くすべし。

殊更夫の兄(あに)兄(あに)兄・嫂(よめ)嫂(よめ)嫂は、厚くうやまうべし。我が昆(あに)昆(あに)昆・姉と同じくすべし。 ↑

8 嫉妬の心、努(ゆめ)努(ゆめ)発(おこ)努努発(ゆめゆめおこ)努努発すべからず。男淫(いん)乱(らん)淫乱(いんらん)淫乱ならば、諫(いさ)諫(いさ)諫むべし。

妬(わた)妬(わた)妬み甚だしげれば、其の気色・言葉も恐ろ敷く冷(すさ)冷(すさ)冷まじくして、却って夫に疎(うと)疎(うと)疎まれ見限らる物なり。

苦し夫不義過(あやま)過(あやま)過ち有らば、わが色を和(やわ)和(やわ)和うぎ声を雅(やわ)雅(やわ)雅らかにして、諫むべし。

諫めを聴かずして怒らば、先ず暫く止(とど)止(とど)止めて、後に夫の心和らぎたる時、復(また)復(また)復諫むべし。

必ず気色を暴(あら)暴(あら)暴くし、こえをいららぎて、夫に逆(さか)逆(さか)逆い叛くことなかれ。 ↑

9 言語(ことば)言語(ことば)言語を慎みて多くすべからず。仮(かり)仮(かり)仮にも人を誹(そし)誹(そし)誹り、偽りを云うべからず。

人の謗(そし)謗(そし)謗りを聞くことあらば、心に修めて人に伝え語るべからず。

訕(そし)訕(そし)訕りを云いつたうるより、親類共間(なか)共間(なか)共間悪しくなり、家の内おさまらず。 ↑

10 女は常に心遣いして、其の身を堅(かたく)堅(かたく)堅倶謹み護るべし。

朝(あした)朝(あした)朝は早く起き、夜は遅く寝(い)寝(い)寝ね、昼はいねずして、いえの内の事に心を用い、織り・縫い・績(う)績(う)績み・緝(つむ)緝(つむ)緝ぎ、怠るべからず。

亦茶・酒など多く呑むべからず。

歌(か)舞(ぶ)妓(き)歌舞妓(かぶき)歌舞妓・小(こ)歌(うえ)小歌(こうえ)小歌・浄るりなどの淫(たわ)淫(たわ)淫れたる事を、見聴くべからず。

宮・寺など都(すべ)都(すべ)都ての人のおおくあつまる処へ、四十歳より内は余りに行くべからず。 ↑

11 巫(みこ)巫(みこ)巫・覡(かんなぎ)覡(かんなぎ)覡などのことに迷いて、神(かみ)仏(ほとけ)神仏(かみほとけ)神仏を汚(けが)汚(けが)汚し近付き、猥にいのるべからず。

只(ただ)只(ただ)只人間の勤めをよくする時は、禱(いの)禱(いの)禱らずとても、神(かみ)仏(ほとけ)神仏(かみほとけ)神仏は守り給うべし。 ↑

12 人の妻と成りては、その家をよく保つべし。妻の行ない悪しく放(ほう)埓(らつ)放埓(ほうらつ)放埓なれば、家を破る。 万事倹(つづま)倹(つづま)倹やかにして、費(つい)費(つい)費えを作(な)作(な)作すべからず。

衣服・飲(いん)食(しい)飲食(いんしい)飲食なども、身の分限にしたがい用いて、奢(おご)奢(おご)奢ることなかれ。 ↑

13 若き時は、音の親類、友達、下(しも)部(べ)下部(しもべ)下部等の若き男には、打ち解けたる物語し、近付くべからず。男(なん)女(にょ)男女(なんにょ)男女の隔てを固くすべし。

如(い)何(か)如何(いか)如何なる用有りとも、若き男に文(ふみ)文(ふみ)文など通わすべからず。 ↑

14 身の荘(かざ)荘(かざ)荘りも衣裳の染いろ模様なども、目にたたぬようにすべし。身と衣服との穢れずして潔(きよ)潔(きよ)潔げなるはよし。

勝(すぐ)勝(すぐ)勝れて清(きよ)清(きよ)清らを尽くし、人の目に立つほどなるは悪しし。只わが身に応じたるを用ゆべし。 ↑

15 我が郷の親の方(かた)方(かた)方に私(わたくし)私(わたくし)私し、夫の方の親類を次にすべからず。正月・節句などにも、まず夫の方を勤めて、次に我親の方をつとむべし。

夫の許さざるには、何(いず)方(かた)何方(いずかた)何方へも行くべからず。私に人に饋(おく)饋(おく)饋りものすべからず。 ↑

16 女は、我が親の家をば継がず、舅(しゆうと)舅(しゆうと)舅・姑(しゆうとめ)姑(しゆうとめ)姑の跡を継ぐゆえに、わが親よりも嫜(しゅうとしゅとめ)嫜(しゅうとしゅとめ)嫜を大切に思い、孝行を為すべし。

嫁いりしてあとは、わが親の家に行くことも稀(まれ)稀(まれ)稀なるべし。

増して、他の家へは、大(おお)形(がた)大形(おおがた)大形は使いを遣わして音(いん)問(もん)音問(いんもん)音問をなすべし。

又我が親(おや)郷(さと)親郷(おやさと)親郷のよきことを侈(ほこ)侈(ほこ)侈りて讃(ほ)讃(ほ)讃めかたるべからず。 ↑

17 下(しも)部(べ)下部(しもべ)下部余(あま)多(た)余多(あまた)余多めしかうとも、万(よろず)万(よろず)万の事自ら辛労を忍(こら)忍(こら)忍えて勤むること女の作法なり。

舅(しゆうと)舅(しゆうと)舅・姑(しゆうとめ)姑(しゆうとめ)姑の為に衣(きもの)衣(きもの)衣を縫い、食を調え、夫に仕えて、衣(きぬ)衣(きぬ)衣を畳み、席(しきもの)席(しきもの)席を掃き、子を育て、汚れを洗い、常に家の内に居て、猥(みだ)猥(みだ)猥りにそとへ出ずべからず。 ↑

18 下女をつかうに、心を用ゆべし。云う甲(か)甲(か)甲斐(い)斐(い)斐なき下(げ)下(げ)下﨟(ろう)﨟(ろう)﨟は習わし悪しくて智慧なく、心奸(かたまく)心奸(かたまく)心奸敷く、物いうこと祥(さが)祥(さが)祥なし。

夫のこと、舅(しゆうと)舅(しゆうと)舅・姑(しゆうとめ)姑(しゆうとめ)姑・姨(こじゅうと)姨(こじゅうと)姨のなど、我が心に合わぬ事あれば猥(みだ)猥(みだ)猥りに譏(そし)譏(そし)譏り聞かせて、それを却って君(しゅう)君(しゅう)君の為と思えり(主人である妻へ忠義づらをしている)。

夫人もし智慧なくしてこれを信じては、必ず恨み出来安し。

元(もと)来(より)元来(もとより)元来夫の家はみな他人なれば、恨み叛き恩愛を捨つること安し。

構えて下女の詞(ことば)詞(ことば)詞を信じて、大切なる嫜(しゅうとしゅとめ)嫜(しゅうとしゅとめ)嫜・姨(こじゅうと)姨(こじゅうと)姨の親しみを薄くすべからず。

若し下女勝(すぐ)勝(すぐ)勝れて多言(くちがま)多言(くちがま)多言しくて悪しき者ならば、早く追い出すべし。

か様の者は、必ず親類の中をも云いさまたげ、家を乱す基いとなるもの也。恐れるべし。又卑しき者を使うには、気に合わざること多し。

それを怒り罵りて止まざれば、約(せわ)々(せわ)約々(せわせわ)約々敷く腹立つこと多くして、家の内静かならず。

悪しき事あらば、折々云い教えて、誤りを直すべし。少しの過ちは、忍(こら)忍(こら)忍えて怒るべからず。

心の内にはあわれみて、外(ほか)外(ほか)外には行(ぎょう)規(ぎ)行規(ぎょうぎ)行規を固く訓(いまし)訓(いまし)訓めて、怠らぬ様につかうべし。

与え恵むべき事あらば、財を惜しむべからず。

但し、我が気に入りたるとて、用にも立たぬ者に猥りに与うべからず。 ↑

19 凡そ婦人の心(こころ)様(ざま)心様(こころざま)心様の悪しき病は、和らぎ順(したが)順(したが)順わざると、怒り恨むるよ、人を謗(そし)謗(そし)謗ると、智慧浅(みじか)浅(みじか)浅きとなり。

此の五つの疾(やまい)疾(やまい)疾は、十人に七八は必ずあり。

是れ婦人の男に及ばざる所なり。自ら顧み戒めて改め去るべし。中にも智慧の浅きゆえに、五つの疾(やまい)疾(やまい)疾も発(おこ)発(おこ)発る。

女は陰(いん)性(しょう)陰性(いんしょう)陰性なり。陰は夜にて暗し。

所(ゆ)以(え)所以(ゆえ)所以に、女は男に比(くら)比(くら)比ぶるに、愚かにてめの前なる可然(しかるべき)可然(しかるべき)可然ことをも知らず。

又人の誹(そし)誹(そし)誹るべきことをも弁(わきま)弁(わきま)弁えず。わが夫、我が子の災(わざわい)災(わざわい)災と成るべき事をも知らず。

科(とが)科(とが)科もなきひとを怨み、怒り呪詛(のろい)呪詛(のろい)呪詛、あるいは人を妬みにくみて、わが身独(ひと)身独(ひと)身独り立たんと思えど、人に憎まれ疎(うと)疎(うと)疎まれて、みな我が身の仇となるいことを知らず、最(いと)最(いと)最はかなく浅(あさ)猿(ま)浅猿(あさま)浅猿し。子を育つれ共、愛に溺(おぼ)溺(おぼ)溺れて習わせ悪しし。斯く愚かなる故に、何事も我が身を謙(へりくだ)謙(へりくだ)謙りて夫に従うべし。

古(いにしえ)古(いにしえ)古の法に、

「女(にょ)子(し)女子(にょし)女子を産めば、三日床(ゆか)床(ゆか)床の下に臥(ふ)臥(ふ)臥さしむる」

といえり。

是れも、男は天に仮(たと)仮(たと)仮え、女は地に象(かたど)象(かたど)象るゆえに、万(よろず)万(よろず)万のことにつきても、夫を先立て、我が身を後にし、我がなせる事に能(よ)能(よ)能きことありとても、誇る心なく、赤悪しきことありて人に云わるる迚(とて)迚(とて)迚も諍(あらそ)諍(あらそ)諍わずして、はやくあわまちをあらため、重ねて人に謂われざるように我が身を敬(たしな)敬(たしな)敬み、また人に侮(あなど)侮(あなど)侮られてもはらたら憤(いきどお)憤(いきどお)憤ることなく、能く堪えて物をおそれ慎むべし。

如斯(かくのごとく)如斯(かくのごとく)如斯心得なば、夫婦も中、おのずから和らぎ、行く末ながく連れそいて、家のうち穏やかなるべし。

右の条々、稚(いとけな)稚(いとけな)稚きときより、よく訓(おし)よく訓(おし)よく訓ゆべし。又書き付けて、折々読ましめ、忘るることなからしめよ。

今の代の人、女子(むすめ)女子(むすめ)女子に衣服道具などおおく与えて婚(よめ)姻(いり)婚姻(よめいり)婚姻せしむるよりも、此の条々を能(よ)能(よ)能くおしゆること、一生身を保つ宝なるべし。

古(ふるき)語(ことば)古語(ふるきことば)古語に、

「ひとよく百万銭を出して女子(むすめ)女子(むすめ)女子を嫁(か)嫁(か)嫁せしむることを知って、十万銭を出して子をおしゆることを知らず」

といえり。

誠なるかな。女子の親たる人、此の理(ことわり)理(ことわり)理を知らずんばあるべからず。かしく。↑

益軒貝原先生述

江戸日本橋南一丁目

小川彦九郎

書林

大坂心斎橋順慶町

柏原清右衛門

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